受験を控えた学生や集中力が求められるビジネスパーソン、瞬時の判断力が鍵を握るアスリートたちの間で、「集中力」や「記憶力」の維持・向上をサポートする身近な栄養素として、ぶどう糖が注目されています。実はこのぶどう糖、人間の脳にとって最も重要なエネルギー源であり、体内でもさまざまな働きを担っています。
本記事では、ぶどう糖メーカーの視点から、私たちの日常生活で役立っているぶどう糖の基礎知識を、分かりやすく解説します。
※本記事はぶどう糖の一般的な栄養特性について述べたものであり、特定の製品の効果・効能を保証するものではありません。
ぶどう糖は「グルコース(Glucose)」とも呼ばれ、分子式は C₆H₁₂O₆で表されます。自然界に広く存在する糖の一つで、ヒトをはじめとする多くの生物のエネルギー源として重要な役割を果たしています。ぶどう糖は、1747年にアンドレアス・マルググラフにより、干しぶどうから発見されたことに始まります1)。
このぶどう糖の特徴の一つが、体内での吸収と代謝の早さです。例えば、低血糖の症状が現れた場合、すぐに吸収の速い糖分を摂取すれば通常5分以内に症状は改善する2)、と言われています。それほどぶどう糖は体内にすばやく取り込まれ、すぐにエネルギーへと変換されるのです。
また、グルコースは、脳や中枢神経系においてほぼ唯一のエネルギー源として利用されており3)、ぶどう糖は「脳のガソリン」とも言えるほど重要な存在です。
ぶどう糖は、エネルギー源としてだけでなく、食品加工の現場でも重宝される多彩な特性を持っています。その特性を知ることで、日常的に口にする食品やサプリメントへの理解がより深まります。
ぶどう糖は、甘みを持つ単糖類の一つです。その甘さは砂糖(ショ糖)の約70%程度とされ、爽やかな甘みが特徴です。後味のキレが良いため、菓子類や飲料、ゼリーなどに使用される際、他の素材の風味を引き立てる役割も果たします。
ぶどう糖は加熱によってメイラード反応(アミノ酸との反応)を起こしやすく、焼き菓子やパンなどで焼き色をつける効果があります。例えばぶどう糖が含まれているクッキーやトーストであれば、加熱することで食欲をそそるような香ばしい焼き色が現れます。この特性は食品に「見た目のおいしさ」や「焼き立て感」を与える上で重要な要素となっています。
ぶどう糖は摂取後すぐに吸収され、素早くエネルギーに変換されるのが大きな特徴です。そのため、点滴など医療用途でも使用されることが多いのです。
ぶどう糖は水分を保持する性質があり、これによって微生物が増殖しにくくなります。そのため、製品の保存性を高める目的でも活用されています。
炭水化物の一種である糖質には、構造の違いによって「単糖類」「二糖類」「三糖類以上」などに分類されます。これらはさらに、体内で消化吸収されるかどうかによって区分することができます。
ぶどう糖と同じ単糖類には「果糖」があります。果糖は果物やハチミツに多く含まれ、ぶどう糖よりも甘味が強いのが特徴です。これらもエネルギー源にはなりますが、ぶどう糖のように直接脳や筋肉に使われるわけではありません。
炭水化物 | |||
単糖類 | 二糖類 | 三糖類以上 | |
消化吸収される糖 |
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消化吸収されない糖 |
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ぶどう糖には、形状や製造方法の違いによってさまざまな種類があります。たとえば、煎糖法で製造される「無水結晶ぶどう糖」や、温度降下法による「含水結晶ぶどう糖」、噴霧全糖結晶方式による「全糖ぶどう糖」などがあり、それぞれの性質に応じて、食品・医薬品・工業製品などの幅広い分野で用途に応じて使い分けられています。
サンエイ糖化でも、これらの製法や性質を活かした結晶・粉末タイプのぶどう糖製品を取り扱っています。製品の詳細については、こちらからご覧ください。
1) AM Shendurse, CD Khedkar. Glucose: Properties and Analysis. The Encyclopedia of Food and Health, (2016), 3, 239-247.
2) 「重篤副作用疾患別対応マニュアル 低血糖」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1d45.pdf(2025年7月1日閲覧)
3) 丹羽利充編集.臨床栄養実践ガイド,中外医学社,2014,5p.