
受験を控えた学生や集中力が求められるビジネスパーソン、瞬時の判断力が鍵を握るアスリートたちの間で、「集中力」や「記憶力」の維持・向上をサポートする身近な栄養素として、ぶどう糖が注目されています。実はこのぶどう糖、人間の脳にとって最も重要なエネルギー源であり、体内でもさまざまな働きを担っています。
本記事では、ぶどう糖メーカーの視点から、私たちの日常生活で役立っているぶどう糖の基礎知識を、分かりやすく解説します。
※本記事はぶどう糖の一般的な栄養特性について述べたものであり、特定の製品の効果・効能を保証するものではありません。
ぶどう糖の主な機能とメリット
ぶどう糖は、単なる甘い成分ではありません。体や脳にとって欠かせないエネルギー源であり、私たちの日常生活にさまざまなメリットをもたらします。ここでは、特に注目されている3つの働きにフォーカスして、ぶどう糖の持つ力をご紹介します。

【1】集中力・記憶力の向上
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」1)によると「ぶどう糖の必要量は少なくとも100 g/日」と推定されており、集中して物事に取り組むためには、安定した糖分の供給が重要です。
健康な成人男女が、ぶどう糖26gを含んでいるラムネ菓子を摂取すると、必要な情報を保持し、記憶に従って正確に対処する能力や精度を指す「ワーキングメモリー」や、注意力を長時間保つ能力である「持続的注意力」が有意に改善することが報告されています2)。また、ぶどう糖の十分な供給が記憶の定着に役立つことも報告されています3)。
これらの知見から、ぶどう糖の摂取と認知機能との関係について、さまざまな研究が進められており、日常生活においてもぶどう糖を適切に取り入れることがパフォーマンス向上の一助となる場合があります。
【2】疲労回復・精神安定
「なんとなく疲れた」「イライラしやすい」と感じて初めてエネルギー切れを意識する人もいます。エネルギーが切れると集中力が続きにくくなったり、だるさやイライラを感じたりすることがあると言われています。
ぶどう糖は脳のエネルギー源であるため、エネルギー補給として取り入れられることがあります。一部の研究では、運動中もしくはその後に急速に運動能力を回復する必要のある場合や、疲労を速やかに取り除く必要のある場合、あるいは疲労困憊に対する応急処置として、ぶどう糖の有効性が示唆されています4)。
また、別の研究では、長期的に断食して血糖値が下がった状態から回復すると、脳がリラックスしているときに見られる脳波(シータ波と低アルファ波)が強まり、この回復は注意力の向上につながることが実証されています5)。
【3】低血糖対策
低血糖とは、血液中のぶどう糖濃度(血糖値)が低くなった状態です1)。この状態になると、ふらつきや動悸、意識の低下といった症状が現れます。
そうした緊急時の対策として、ぶどう糖は医療現場でも活用されています。低血糖の症状が現れた場合、周りにいる人が吸収の早い糖分やぶどう糖を食べさせることが有効であり、低血糖対策アイテムとしてぶどう糖タブレットなどを携帯することが推奨されています。
1)「『日本人の食事摂取基準(2025年版)』策定検討会報告書」(厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316585.pdf(2025年7月1日閲覧)
2) 稲垣宏之ら.「健康な成人におけるぶどう糖ラムネ菓子摂取によるワーキングメモリーと注意力の改善」ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験. 薬理と治療 2020, 48(4), 599-60.
3) Sünram-Lea SI, et al. Glucose facilitation of cognitive performance in healthy young adults: examination of the influence of fast-duration, time of day and pre-consumption plasma glucose levels. Psychopharmacology (Berl). 2001, 157(1), 46-54.
4) 杉浦耀子・中野昭一・井川幸雄 (1965).「運動回復過程に及ぼすブドウ糖及びショ糖の効果」. 東京慈恵会医科大学第2生理学教室.
5) An YJ, et al. Effects of blood glucose levels on resting-state EEG and attention in healthy volunteers. J Clin Neurophysiol. 2015, 32(1), 51-56.